夏の真ん中
         〜789女子高生シリーズ

         *YUN様砂幻様のところで連載されておいでの
          789女子高生設定をお借りしました。
 
 


カレンダーも真夏へ突入。
お店のフロアに提げてあるのは、古民家風の雰囲気に合わせた
大福帖みたいな縦長タイプのだが、
住居スペースのは、
曜日に添うたスタンダードな写真付きのが主なので。
八畳間のお茶の間では、青空の下でヒマワリが笑っており、

 「夏、ですよねぇ。」

珍しくも寝癖がついたのでと、朝っぱらからシャワーを浴び、
自慢の髪を手際よく乾かしてから 朝ご飯にとやって来たそのまま、
窓の外よりカレンダーへとそんな感慨をぽろりしたのは。
何だか年々暑くなってないか?な日本の夏に、
ちょっぴり閉口気味のひなげしさんこと平八で。
今朝は台風の影響か、湿っぽい風も強そうで、
せっかく決まった髪がくしゃくしゃにされないかがちょっと心配。
関東地方は冗談はよせという暑さの只中であり、
昨年は関西がこうだったという、
夜中を過ぎても30度近い気温の晩も続いており、
夜更かしが苦手ではない今時のお嬢さんである平八も、
さすがにちょっぴり目許が…あ、それは常のことでしたかね。

 “…もーりんさんでも無礼は許しませんよ?”

開眼して見せましょうか、それとも久蔵をけしかけましょかと、
どっちでもおっかないことをさらりと場外へ伝えてくださってから、

 「あ、ゴロさん、おはようございます♪」
 「おお、おはよう。」

大きめのトレイへ朝食一式を載せてやって来た、
愛しのお兄さんへと お元気そうなお声をかける。
気持ち、甘さも高さも少しほど盛られているのは
恋するヲトメゆえのことだが、

 「きゃあ、美味しそう〜vv」

こちらの賛辞には何にも盛ってはない正直さ。
何しろM区の舌の肥えたお嬢様がたやマダムたちが
常のご贔屓としている甘味処の御亭でもある五郎兵衛なので。
好みをしっかり把握している平八への食事ともなりゃ、
暑い寒いや休みか学校かなんて事情がどれほど違えど、
手も無くご機嫌な献立をどうぞと供せる凄腕。
今朝も、大きめの卓袱台へと載せれたのは、
朝から蒸すからということでの
桃とバナナのスムージーに、
ハムと薄切りポテトのトーストサンドの上へ
とろとろ半熟のポーチドエッグと
とろり濃厚なソースをのせた、
五郎兵衛特製 自己流エッグベネディクト、
トマトのサラダ添えという品揃えであり。

 「昼はどうするね。
  確か今日は国立競技場まで行くとか。」

 「はいなvv
  東京体育館までバレーを応援しに行きます。」

観に行くとなると、
親友の一人である三木さんチの久蔵お嬢様が
嗜んでいる以上のレベルでこなしておいでの
“バレエ”という選択もあるが、

 「ウチの女学園の女子バレチームが、
  高校総体へ何と奇跡の初出場ですものvv」

奇跡のなんて言い方は、ちょみっと失礼かもだけど。
強豪ひしめく東京都代表に勝ち抜けたその当時からして、
前代未聞の大番狂わせだの、他の名門校チームの質が落ちただのと、
もっとひどい言われようだってしたほどで。
お嬢様学園が奇跡の躍進と扱われ、
こっそり有力者が多かろから、何か手を回したのでは…なんて、
とんでもないことをこぼす筋もないではなかったそうだけど。
にわかに起こされた大会ならともかくも、
歴史も長くて権威ある高校総体でそれはなかろと、
逆になんて不謹慎なことを言うかと糾弾されたとかどうとか。
そうまで大人たちや世間がビックリしたほどに、
今年の女学園チームのメンバーは粒よりの頑張り屋さん揃いだそうで。

 「キャプテンの一ノ瀬さんが、
  去年も都大会で得点王だったほどですしvv」

それにそれに、ちょっとばかり曰くがあってのこと、
他の部へよりも、親しみというか関心というかも沸く相手とあって。
剣道の部の試合を終えて小田原から戻って来た七郎次や、
バレエの公演のちょうど狭間だという久蔵も顔をそろえての
三華様がた揃い踏みにて、応援に繰り出す所存なのだとか。

 「そういえばシチさんは。」
 「勿論 優勝なさいましたよvv」

剣道女子は小田原で、1日から4日のうちに競技も終えており、
女学園が誇る鬼百合
もとえ、白百合様こと、草野さんチの七郎次さんが
個人戦での連覇を勝ち取っている。
バレーは、男子は3日から女子は8日から、
東京体育館と墨田体育館で開催というのが
前以て判ってはいたけれど、

 「皆で応援に行こうっていうのは急に決まった話でして。」

最初は久蔵殿だけが
部員に仲よくしている妹分がいるのでと、
一人で観戦しに行くつもりだったようで。
八月の予定を刷り合わせていた折にそれが判って、
何ですよそんな水臭いと、
あとの二人も同行する運びとなったとか。

 「支度は出来ておるのかな?」

この暑い中への外出だ。
いくら元気溌剌な女子高校生でも
熱中症対策のあれこれは要るだろうにと、
スムージーとは別口、あっさり無糖のアイスティーを
クラッシュアイス入りのグラスにそそぎつつ
五郎兵衛がさりげない口調で訊いたれば、

 「大丈夫ですよぉvv」

ふくよかな頬に
おいしい朝ご飯へ幸せいっぱいという笑みをにじませ、
ひなげしさんが胸を張る。

 「道中はそれなり、冷房も効いていましょうし、
  会場では私特製のクールクラウド、
  ハンディタイプを使いますからvv」

 「そ、そうか。」

名称だけを言われても、
正直言って何のどういうものなのかは判らないものの、
このお嬢さんの発明品だという冠は判ったので。
だったらそうそう悪いものでもなかろうよと、
親ばか度 80%くらいの感慨で
うんうんそれはよかったと頷いてから、

 「そんな忙しい日では仕方がないがの。」

自分はエッグソースを載せないトーストサンドを頬張りつつ、
一緒に朝食を食べていた五郎兵衛さんが、
その手を止めると立ち上がり、
大柄な体躯には相応わぬ身軽さで
ひょいと茶の間から出て行ってしまう。

 「???」

食事中なのになと平八が小首を傾げたのは、
大雑把に見えつつ、実は
こういう作法違反は まずやらない彼だから。
それは繊細な意匠和菓子も手掛ける五郎兵衛だけに、
そこはちゃんとしている彼だのになと、
さっぱり甘いスムージーを堪能しつつ待っておれば、

 「プレゼントは追って渡すが、まずはこれを。」

両手で恭しく掲げて来たトレイの上、
キーウィやマンゴー、ベリー各種でカラフルに飾られた、
味のある表情で生クリームをコートした、
それは小粋なバースデイケーキのご入来に、

 「う・わぁあぁ〜〜〜っvv」

感動し過ぎて、ついつい両目開眼してしまった、
ひなげしさんだったそうでございます。






    〜Fine〜  14.08.08.


  *今日、8月8日は、
   ソロバンの日で、髭の日で、
   白玉の日で、タコの日で、鍵盤の日で、洋食の日で、
   ヒョウタンの日だったり
   プチプチクッションの日でもあるそうな。

   それはともかく。
   ヘイさんのみならず、
   どのキャラもお誕生日は設定されてないですが、
   あまりにドンピシャな日だったので、
   そういう日だったというお話を一席。
   勿論、シチさんも久蔵殿も、
   それぞれに贈り物は用意していることと思われます。
   色んな意味から楽しい1日になりそうで、
   台風が来てることも忘れちゃうかもですね。

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